2021年7月1日木曜日
その2
そのようデータを、アントという民間の企業ではなく、国家の手に集めるというのがデジタル人民元の重要な目的ではないかと考えられる。もっと野心的な目的もあるかもしれない。中国は「一帯一路」地域やアフリカ諸国の支援にあたって、デジタル人民元を積極的に用いる可能性がある。仮にそれらの地域でデジタル人民元が広く使われることになれば、中国はそれらの諸国に関する詳細なデータを手に入れることができる。
一方アメリカは、これまでCBDCに関して消極的な態度をとり続けていた。トランプ前大統領がこうしたものに対して否定的な考えを持っていたことの影響が大きかったと考えられる。
しかし、中国がマネーデータ政策を積極的に進めていけば、アメリカものんびりしてはいられない。実際、FRB(米連邦準備制度理事会)は、今年の夏にデジタル通貨についての報告書を取りまとめることにした。
もしアメリカもCBDCに乗り出すということになれば、米中間でマネーをめぐっても戦いが始まることになる。マネーから得られるデータをめぐって競争と対立が起きるだろう。
マネーの情報で個人の状況を
直接に把握すべきでない
未来社会の構築のためにデータが重要な役割を果たすのは、米中に限られたことではない。日本でも、同じように言えることだ。そして、デジタル通貨がデータ収集の手段として極めて強力であることもそうだ。したがって、日本でも、今後、データ収集という観点からデジタル通貨の採用が進められていく可能性がある。
こうした状況を前にして、マネー情報の収集と利用が個人生活や企業生活にどのような影響をもたらすかを真剣に考える必要が起きている。
上で指摘したようにマネーのデータには2つの利用法がある。
第1は、個人名とは関連づけず、ビックデータとして利用することだ。第2には、個人の状況を直接に把握するための情報として用いることだ。この2つは区別して考える必要がある。
これらのうち、第1の利用法は認められてしかるべきだろう。むしろ、生産性向上のために積極的に進められるべきだ。なぜなら、ビックデータとして利用する場合には、アドレスが分かっていれば十分であり、個人名とデータを紐づける必要はないからだ。したがって、個人のプライバシーが侵される危険は少ない。
これまでのSNSなどでもたらされるデータの利用でも、本人名を用いないで行なわれるプロファイリングは許容されてきた。日本の個人情報保護法も、個人名と結びつけていないデータは「個人情報」とはされていなかった(ただし、2020年6月の同法改訂で「個人関連情報」という概念が新設され、保護される範囲が拡大された)。
しかし、第2の利用法(個人の状況を直接に把握するための情報として用いること)は認めるべきではない。とくにCBDCの場合にはそうだ。なぜなら、こうした利用法を認めれば、国が個人を管理するための手段として用いられる危険があるからだ。
仮想通貨では匿名取引が可能だが
取引所での交換は電子マネーと同じ
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