ESG(環境・社会・企業統治)を重視した投資が世界で拡大を続けている。日米欧などの普及団体でつくる「世界持続可能投資連合」(GSIA)が19日発表した2020年のESG投資額は35兆3千億ドル(約3880兆円)で、18年の前回調査から15%増えた。
GSIAの調査は2年に1度、年金基金や資産運用会社などを対象にESG投資額を調べるもので、今回が5回目。特に米国は年金基金などが積極的に投資を増やし、前回から42%増の17兆810億ドル(約1880兆円)となった。
一方、欧州はうわべだけで中身を伴わない「グリーンウォッシュ」を排除しようと基準を厳しくしていることなどで、15%減の12兆170億ドル(約1320兆円)だった。
日本は32%増の2兆8740億ドル(約320兆円)。政府が50年までの温室効果ガス排出「実質ゼロ」を掲げるなどし、機関投資家や個人のESG投資への関心が高まった。ただ、運用資産全体に占める割合は、欧州の42%、米国の33%に比べて24%と低い。機関投資家の取り組みが大手に偏り、国外から投資を呼び込めていないことが背景にあるという。
日本政府は旺盛なESG投資を国内に呼び込もうと、「グリーン国際金融センター」構想を掲げる。東京証券取引所などとともに6月に改訂した企業統治指針は、上場企業の一部に気候変動リスクの開示を求めている。取引所でのESG関連債の情報発信も充実させる。7月には金融庁内に「サステナブルファイナンス推進室」を新設。日本銀行も16日、気候変動対応の投融資を後押しする新たな資金供給策の骨子を公表した。
GSIAに加盟する日本サステナブル投資フォーラム(JSIF)の荒井勝会長は「残念ながら世界の投資家は日本に成長性を感じていない」と指摘。「経営者らがESG開示を通じて長期的なビジョンを考えることで、事業機会の創出につなげていくべきだ。政府も有価証券報告書での開示の義務づけなど取り組みを深めてほしい」と話す。(西尾邦明)
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