中国の恫喝外交の典型 😊😍😉
一方で、今回の動画を発信した中国側の本当の狙いについて、専門家の間ではさまざまな見方がある。
中国の対外戦略に詳しいロバート・サター氏は「言葉だけで日本の政策を変えようとする中国の心理作戦」であるとの見解を明らかにした。サター氏は過去40年ほど、米国歴代政権の国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議などで対中国政策を担当した専門家だ。現在はジョージ・ワシントン大学の教授を務める。
サター氏の見解の要旨は次のとおりである。
・今回の動画で明らかにされた日本への核攻撃という戦略は、中国年来の日本に対する敵意や憎悪を示すだけでなく、自国の政策の追求のためには軍事力行使、さらには核攻撃の意図を表明して相手に圧力をかけるという中国の近年の恫喝外交の典型だといえる。
・日本への核攻撃という戦略は、中国が示してきた「たとえ戦争が起きても先には核兵器を使わない」という原則や「核兵器を持たない相手には核攻撃はしないと」いう原則にも反する。だからこの動画によって、中国の「公約」は信用できないことが証明されたともいえる。
・日本としては、この動画に代表される中国の基本的な対日姿勢や、日本に対する威嚇や脅迫という要素を改めて認識して、対中姿勢の強化に努めるべきだ。この動画の内容に、日本側として懸念を強めるべきである。
・ただし、現在の中国指導部は米国との軍事衝突を避けたいというのが本音だという点も認識しておくべきだろう。中国政府は強硬なレトリック(言辞)を用いるが、米軍との全面衝突につながる台湾への武力侵攻は現段階では避けたいとしている。だから日本の台湾有事への参戦という事態も、現在はまだ現実的ではない。
・中国の習近平政権が米国との軍事衝突を回避し、米国との経済面での絆の断絶を避けたいと考えていることは、最近、米国に亡命した中国政府高官らの証言からも確実だといえる。いま米国と軍事衝突しても中国側に勝算がなく、経済断交も中国経済への打撃が大きすぎるという計算が、習近平政権の現在の対米政策の基本だとみられる。
サター氏の以上の発言は、今のところ中国には台湾武力侵攻の意図がないから「日本への核攻撃」も現実的な警告ではない、という意味だといえよう。つまりは言葉だけで日本に圧力をかけて、日本の対台湾や対中国の政策を中国側に有利に変えさせようという心理作戦、政治作戦だというわけだ。
脅しをかけられた当事国の日本としては、これもまた認識しておくべき考察だといえよう。