【グラスゴー時事】岸田文雄首相は2日、英グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で演説し、首脳外交の本格デビューを果たした。二酸化炭素(CO2)の排出量が多い石炭火力発電に頼る日本に厳しい視線が注がれる中、アジア各国の「脱炭素化」で追加支援を約束。地球規模の課題への取り組みは、岸田外交の試金石となりそうだ。
首相は「気候変動という人類共通の課題に日本は総力を挙げて取り組んでいく。その決意を伝えるため駆け付けた」と表明。アジアの脱炭素化支援のため今後5年間で最大100億ドル(約1兆1300億円)の支援を行うと発表した。
首相の外遊は就任後初めて。衆院選の投開票から2日後の早朝に羽田空港を出発、現地滞在わずか半日の「弾丸ツアー」で、首脳級会合に途中から参加。それでも出席を決めた背景には、気候変動問題で「日本の存在感を高める」との強い決意がある。
ただ、政府は2030年度に温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減する目標を掲げる一方、10月に閣議決定した新たなエネルギー基本計画には、電源構成の約2割を石炭火力発電で賄う方針を盛り込んだ。議長国の英国をはじめ先進国で「脱石炭」の動きが加速する中、日本への圧力が強まるのは確実だ。
COP26での首相演説について、周辺は「日本として押し込まれるばかりでなく、アジア支援という『弾』を用意した。評価されると思う」と期待。途上国を技術、資金面で後押しすることで「他の先進国の支援の呼び水になる」(同行筋)ことを狙う。
初外遊のもう一つの目的は、ジョンソン英首相ら外国首脳との対面会談の実現だった。世界中で新型コロナウイルス感染拡大が続く中、外務省幹部は「今回を逃すと対面外交の機会はしばらく限られる」と指摘。バイデン米大統領とも短時間会談した。
首相は、安倍政権で外相を4年8カ月務め、豊富な外交経験を自負。ただ、10月末にイタリア・ローマで開かれた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、衆院選と重なったためオンライン参加にとどまった。その衆院選で安定的な政権基盤を築いたことで、首相は今後、積極的な首脳外交を展開したい考えだ。
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