■大学が研究のシーズを発見できていない
大学が企業と共同研究したり、起業したりするメリットは何か。石井教授はこう話す。
「大学の研究者は好奇心で研究をしていることが多いと思いますが、そのなかでも例えば新薬につながりそうな研究をしている先生が、自分の興味関心でベンチャーを立ち上げるということはありました。その一方で、大学が研究のシーズ(製品やサービスの種)を発見してベンチャーを立ち上げる例も、海外にはたくさんあると思います。日本はこの流れがなかなかできていない状況ではあるのですが、近年はサポートファンドが増え、起業のための資金が集めやすくなっています」
大学がかかわるコロナワクチン開発には、こんな期待を寄せる。
「今はコロナ関連事業にはお金が飛び交っているという状況もありますが、ワクチンは人々の命を守る公衆衛生の要の医療技術であり、お金儲けのためのものではありません。世界の人々にすべてワクチンがいきわたるまで、決してパンデミックは収束しないでしょう。いまこそ利他的になる社会を再構築するチャンスにするべきです」
大学の研究力を社会に還元する大学発ベンチャーの活躍に注目したい。
(白石圭)
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