2021年10月30日土曜日

人口の7割接種完了でも「国産ワクチン」が必要な理由は? 大学がリードする開発の最前線 AERA dot. - 2021年10月28日

  ファイザー、ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカ……日本で使われている新型コロナワクチンはすべて外国企業が開発したものだ。10月26日時点で日本の人口の70.1%が2回目接種を終える(首相官邸HP)なか、国内企業もワクチンの開発を急いでいる。こうした開発を支えているのが、大学や大学発ベンチャーだ。国産ワクチンの開発にかかわる大学研究者に話を聞いた。

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 この1年で一気に知られた「m(メッセンジャー)RNAワクチン」。ウイルスのたんぱく質の設計図となるmRNAを含むワクチンで、これを体内に取り込むことで、ウイルスに対する抗体がつくられるという仕組みになっている。ファイザーとモデルナがつくった新型コロナワクチンが、このmRNAワクチンだ。国内では第一三共(東京)が東京大学医科学研究所(東大医科研)と共同開発しており、来年中の供給開始をめざしている。

 だがワクチンにはmRNAワクチン以外にもさまざまな方式がある。KMバイオロジクス(熊本)が開発に取り組むのは新型コロナの「不活化ワクチン」。現在広く接種が行われているインフルエンザやB型肝炎のワクチンはこのタイプで、免疫獲得に必要な成分だけを残しつつ、ウイルスの毒性をなくし(不活化)、注射するものだ。こちらも東大医科研と連携、開発を行っている。同社の永里敏秋社長は25日に会見を開き、来年春から夏までにワクチンの薬事承認を申請し、来年末には供給を開始したいと語っている。

■DNAを取り込むワクチンの治験が始まる

 一方、バイオベンチャーのアンジェス(大阪)は、新型コロナの「DNAワクチン」を開発する。複製したウイルスのDNAの一部を体内に取り込み免疫をつくる仕組みで、治験は国内企業のなかでいち早く2020年6月に始まっている。アンジェスは1999年、大阪大学大学院医学系研究科遺伝子治療学の森下竜一助教授(当時)によって設立された。

 上記の第一三共、KMバイオロジクス、アンジェスはいずれも、政府がワクチンの早期供給のために費用の補助などを行う「ワクチン生産体制等緊急整備事業」に採択されている。

 10年以上第一三共と共同研究を続け、前述のmRNAワクチンの開発にもかかわる、東大医科研感染・免疫部門ワクチン科学分野の石井健教授はこう話す。

 「KMバイオロジクスのワクチン開発には、東大医科研のウイルス学者・河岡義裕特任教授がウイルスの増殖などで協力しています。またアンジェスは、もともと遺伝子治療の分野でスタートした会社です。そのノウハウを生かし、10年近く前からワクチンの開発も始めていました」(石井教授、以下同)

 アンジェスが強みとする遺伝子治療と、同社が開発するDNAワクチンは近い分野にあるという。

 「遺伝子治療とは、からだの中に遺伝子を打ち、必要なたんぱく質を産生させるというものです。たとえば特定のたんぱく質を産生させる遺伝子を持たないことで病気を発症している患者に対し、その遺伝子を補充するために用いたりします。ビオンテックやモデルナも、もともとは遺伝子治療に近い分野のベンチャーとして立ち上がったと聞いています。そこにコロナが来てワクチン開発に乗り出した、という流れがあるのだと思います」

 これまでになかったタイプのワクチン開発に乗り出す企業もある。東大発の創薬ベンチャー・HanaVaxは鼻の粘膜に噴霧することで免疫を獲得する「次世代型経鼻ワクチン」の開発を行っている。同社は東大医科研の清野宏特任教授が関わるバイオベンチャーだ。今年7月、製薬大手の塩野義製薬と、新規経鼻ワクチンの開発に関するライセンス契約を締結した。

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