岸田文雄首相は8日の衆参両院の本会議で、就任後初の所信表明演説を行い、持論の「新しい資本主義」について、「成長戦略と分配戦略」を「車の両輪」として実現を図る考えを表明した。新型コロナウイルスの影響で生活に苦しむ非正規労働者、子育て世帯への給付金支援など、コロナ対策に徹底して取り組む決意も示した。
首相は演説で「新自由主義的な政策は富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ」と指摘。「成長も分配も実現するために、あらゆる政策を総動員する」と訴え、新たに創設する「新しい資本主義実現会議」でビジョンの具体化を進めるとした。
成長戦略の柱の一つに経済安全保障を挙げた。中国を念頭に技術流出を防止し、強靱(きょうじん)なサプライチェーンを構築するための法案を策定すると表明。2050年のカーボンニュートラル実現に向け、「クリーンエネルギー戦略を策定する」考えも示した。
分配戦略の柱として、看護師や介護士、保育士らの所得向上に取り組むための「公的価格評価検討委員会」を設置するほか、賃上げする企業への税制支援を強化する考えを打ち出した。
新型コロナ対策では、ワクチン接種の加速化や経口治療薬の年内実用化に加え、電子的ワクチン接種証明書の活用を提唱。司令塔機能の強化や人流抑制、医療資源確保のための法改正などに着手するとした。非正規労働者や子育て世帯などを守るため「給付金などの支援を実行する」と同時に、事業者に対し、地域や業種を限定せず事業規模に応じた給付金を支給することも明言した。
外交・安全保障では、「自由で開かれたインド太平洋」を推進し、「国際社会の人権問題にも省庁横断的に取り組む」と言及。外交・防衛政策の指針となる「国家安全保障戦略」の初改定を表明した。厳しさを増す東アジアの安保環境を念頭に「海上保安能力やさらなる効果的措置を含むミサイル防衛能力など防衛力の強化」も明記した。
中国とは安定的な関係が重要だとした上で「主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求める」とした。冷え込んだ関係が続く韓国に対しては「健全な関係に戻すため、適切な対応を強く求める」と指摘した。
各党代表質問は衆院で11、12両日、参院で12、13両日にそれぞれ行われる。首相は会期末の14日に衆院を解散する方針だ。
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