2021年6月14日月曜日
胸を張った莫大な予算 結果はGDP激減 原田 泰 - ダイヤモンド・オンライン - 2021年6月14日
政府が世界最大級の規模と胸を張った日本の新型コロナ対策予算。だが結果は、GDPの大幅減少となった。多額の予算を計上したのに経済活動がしぼんでしまったのは不思議だが、予算の中身を見ると、数々の残念な要因が浮かんでくる。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
名目GDPが22兆円減少したのは「不思議」だ
日本の2020年度の名目GDPは、前年比べて約22兆円減少した。もちろん、新型コロナ感染症のためなのだが、なぜこれほど減少したのか、私には不思議な感じがする。
新型コロナウイルス禍は、旅客運輸業、宿泊・飲食サービス業に大きな打撃を与えた。どこにも行くな、外で飲み食いするな、というのだから、当然である。
日本の産業別GDPの統計には旅客運輸業というカテゴリーはないが「運輸・郵便事業」のうち半分程度が人、残りの半分がモノを運んでいるとみられる。
コロナ前の運輸・郵便事業のGDPは29.9兆円、宿泊・飲食サービス業が13.6兆円である(内閣府「国民経済計算」コロナ以前の2019年の値)。すると、旅客運輸業と宿泊・飲食サービス業で計約30兆円だ。これらの産業は、1年間ずっと打撃を受けていたわけではない。
もちろん、これらの産業の所得の減少が他の産業にも波及して日本全体の所得を減少させるのだが、それにしても、30兆円産業の打撃で日本のGDPが22兆円以上も減少するのは、不思議な気がするのだ。
77兆円の予算を何に使ったのか
さらに不思議なのは、コロナ対策として日本政府が77兆円(詳細は後述)も使っていることだ。日本の毎年の予算は、コロナ以前の19年度で101兆円だ。うち23.5兆円が国債費(利払い費+償還費)なので、人やモノに支出しているお金は78兆円である。
つまり、通常の予算とほぼ同じ額がコロナ対策予算となっている。77兆円の予算を余計に使って、日本のGDPは22兆円減少した。本来99兆円(77兆円+22兆円)減少したところを、77兆円の予算を使ったから22兆円の減少で済んだ、ということなのだろうか?私には到底信じられない。77兆円の使い方がお粗末なのではないだろうか。
77兆円の内訳は、下表のようになっている。20年度1次、2次、3次の3回の補正予算額のうちコロナ対策関連のものを足し合わせたので、細かいところでは誤りがあるかもしれないが、大きくは間違っていないはずである。
内訳を見ると、所得保障が17兆円、1人当たり10万円の給付金が13兆円、融資が14兆円、医療費が12兆円、Go Toトラベルキャンペーン関連が3兆円、さらに、強靭な経済構造構築、デジタル、イノベーションによる生産性向上、国土強靭化、その他で16兆円ある。
所得保障17兆円のうち、新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金は、経済活動に影響を受ける事業者の支援や、感染症防止強化策に使用できるとのことだから、一部は所得保障、一部は医療体制の強化(感染を減らして医療体制の負担を削減できると考えられる)の項目に回すべきかもしれないが、すべてを所得保障とした。
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