2020年1月6日月曜日

40年間にわたって対立し、時には正規軍同士の局地的な戦闘もあったが、全面衝突は双方とも避けてきた。イランは人口8千万人超で、兵員数は予備役も含めれば100万人を超えるとされ、中東でも有数の軍事力を誇る。最新鋭の武器をそろえる米軍は空軍や海軍力で圧倒的に優位だが、地上戦ともなれば大きな被害が予想されるためだ。
 そのため正規軍同士の衝突はできるだけしないようにし、双方がそれぞれ支援する軍事組織が、イラクやシリアなどのイラン国外で戦ってきた。
 ところが今回は、トランプ大統領が空爆準備を宣言したように、全面衝突の危険性が高まっている。発端は、米軍がイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官(62)を殺害したこと。日本での知名度は低い人物が、イランでは国民的な英雄だ。最高指導者のハメネイ師の側近ともされ、その存在感は大きかった。
 革命防衛隊は最高指導者に直属する精鋭部隊で、イラン国外での工作活動も行ってきた。イラクやシリア、レバノンやパレスチナなど中東各地で、軍事支援や戦闘活動を長年続けていた。標的は米軍だけではなく、イスラエルや過激派組織「イスラム国」(IS)など様々だ。その先兵となっていたのが革命防衛隊内のエリート組織「コッズ部隊」だった。
 ソレイマニ司令官は20年以上もコッズ部隊を指揮し、工作活動で成果を上げてきた。多くの一般市民が死亡する戦闘にも関わったとされる。米軍にとってはまさに「不倶戴天の敵」だが、ISへの戦闘では事実上共闘することもあるなど関係は複雑だ。ソレイマニ司令官はイラクの首相選びに介入するためイラクを何度も訪れるなど、その政治的手腕も注目されていた。
 こんな重要人物を、米軍はイラクのバグダッド国際空港の近くで1月3日未明に殺害した。乗っていた車両に無人機からミサイルを発射したとされ、同乗していたイラクのイスラム教シーア派武装組織の司令官らも死亡したとされる。

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