2021年7月18日日曜日

  安倍政権が初の緊急事態宣言を発令したのは、改正法成立から3週間後の4月7日。対象の7都府県では初めて「法律に基づく」外出自粛要請や休業要請が出されることになった。政権としては、ここで十分な補償を伴う強い私権制限をかけ、短期間で感染拡大を封じ込める戦略もあったはずだ。だが、彼らがやったのは、休業要請の対象となる業種を絞り込もうとすることだった。宣言を「小さく」使おうとしたのだ。

 

 法律に縛られない私権制限は悩みなく行うのに、法律に基づいた私権制限は渋る。補償を含む政府の責任が生じるのを嫌がったとしか思えない。実際、安倍首相は同7日、国会で「民間事業者や個人の個別の損失を直接補償することは現実的ではない」と答弁している。「政府の責任で補償を行いたくない」という本音を、堂々と口にしたのだ。

 安倍首相に代わって9月に発足した菅政権も、その体質は基本的に変わらなかった。

 

 菅政権は今年2月、新型インフルエンザ等対策特措法など関連法案の再改正を行った。緊急事態宣言の手前の状態で感染拡大を防ぐ「まん延防止等重点措置」を新設し、時短などに応じない事業者に罰金(過料)を課すことを盛り込んだ。法案審議の過程で削除されたが、当初案には入院を拒否した感染者に懲役刑を科すことまで盛り込まれていた。

 「感染拡大が収まらないのは、十分に外出を自粛しない国民のせい」という政権のいらだちが、如実に反映されたような法律だ。

 

 安倍政権も菅政権も、感染拡大を防げなくなると「法律が要請ベースで強い措置が出せない」などと言い、自らの対応のまずさを「法律のせい」に転嫁してきた。特措法の再改正もこうした認識に基づくものだったろう。

 ところが、菅政権はせっかく(あえて言う)特措法を再改正しておきながら、それを使うことには及び腰だ。昨年に最初の緊急事態宣言の発令をためらった安倍政権と相似形をなしている。

 

 菅政権は感染拡大の原因を「飲食店による酒類の提供」1点に押し付けている。このこと自体納得いくものではないが、ここでは取りあえず置く。菅政権がそこまで「酒類提供を何としてもやめさせたい」と言うのなら、再改正した特措法を使って飲食店に営業時間の短縮や休業を「命令」し、応じなければ政治の責任で、法律に基づき粛々と「過料」を課せばいいはずだ。そのための法改正ではなかったのか。そうやって国民全体が政権を甘やかした結果が、こんな政治を生んでしまったのだ。

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