2020年11月15日日曜日
東京の「アジアナンバーワンの金融拠点化」は夢物語? 香港企業誘致の障壁 AFPBB News - AFPBB News - 2020年11月15日
【AFP=時事】抗議活動や中国による国家安全維持法(国安法)施行に揺れる香港から企業を誘致しようと、東京都は猛アピールを続けているが、香港への売り込みは容易でないことが分かってきた。
小池百合子(Yuriko Koike)都知事は「東京をアジアナンバーワンの金融拠点として復活させる」と宣言しており、都は10月、移転を検討する外国企業向けの支援窓口を香港に開設した。
香港から海外への移転を検討している企業にとって、日本はある意味で至極当然の移転先であるかもしれない。世界3位の経済大国で、東京証券取引所(Tokyo Stock Exchange)があり、数々の金融機関や国際企業が拠点を設けている。
しかし、大きな障害と競合相手も複数存在する。専門家らは、アジア地域で金融の覇者になるとの東京の野望は、夢物語の域を出ないかもしれないと指摘する。
何よりもまず、日本の所得税最高税率は45%で、シンガポールの22%、香港の17%と比べるとはるかに高い。英語能力レベルが低いことや、デジタル技術の導入が比較的遅れていることも、以前よりハンディキャップとなっている。
東証では先月、ハードウエアの故障が原因で取引が終日停止した。こうしたシステム障害は、信頼を高めて新たなトレーダーを呼び込むことを困難にする。
■他都市との激しい競争
日本の欧州ビジネス協会(EBC)のミハエル・ムロチェク(Michael Mroczek)会頭は、菅義偉(Yoshihide Suga)首相によるデジタル化と規制緩和の推進に大きな期待が寄せられていると述べる一方、似たような取り組みが長年提案されているが、「あまり変化がないため、懐疑的な見方も強い」と語る。
また、新型コロナウイルスの流行下で日本人が帰国する間にも、在留資格を有する外国人の再入国を何か月も認めなかった政府の厳しい水際対策には「差別」だとの意見もあり、暫定的な移転を検討している企業を躊躇(ちゅうちょ)させかねないと指摘する。
さらに、今後考えられる香港からの企業流出を活用しようとするアジアの都市は東京にとどまらない。
オーストラリアは香港の学生と起業家を対象に、新たなビザ(査証)を発給すると発表。同国当局は「非常に積極的に」企業誘致を行う意向を示している。
調査会社IHSマークイット(IHS Markit)のアジア太平洋担当チーフエコノミスト、ラジブ・ビスワス(Rajiv Biswas)氏は、シンガポール政府は香港の安定と繁栄を望む姿勢を表明するにとどまっているものの、同国が企業にとって最も確実な移転先となる可能性が高いとの見方を示した。
■今は「様子見」
ただ、どの都市が移転先として有利になろうとも、香港からの企業流出が起こり得るかをめぐっては疑問が残る。
英経済調査会社キャピタル・エコノミクス(Capital Economics)のアジア担当チーフエコノミスト、マーク・ウィリアムズ(Mark Williams)氏はAFPに対し、「大企業が香港からの完全撤退を発表するとは予想していない」「企業は香港で段階的に人員を削減し、それ以外の場所で増員する可能性の方が高い」と話した。
また、金融サービス企業「AxiCorp」のグローバル市場チーフストラテジスト、スティーブン・イネス(Stephen Innes)氏は、表現の自由をめぐる不安があっても、香港は投資家や金融サービス企業にとって「中国本土への第一の玄関口」であり続けると述べた。
欧米系大手銀行の香港駐在社員は、匿名を条件にAFPの取材に応じ、「全般的な姿勢は様子見だ」と語り、移転については個人的にはまだ念頭にないと話した。
イネス氏は、シンガポールなどのアジア地域の経済拠点が企業誘致を図る際に中国の激怒を警戒する可能性もあると話し、「(中国への)恩をあだで返すことを望む人はこの地域にはいない」と指摘した。
【翻訳編集】AFPBB News
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