2021年3月28日日曜日

時短拒否の外食企業社長、胸中を激白  中尾 謙介 - 東洋経済オンライン - 2021年3月28日

3月22日、和食レストラン「権八」やイタリアン「カフェ ラ・ボエム」などを展開する東証2部上場の外食企業、グローバルダイニングが東京都を提訴した。 裁判では、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)に基づいて発出された東京都による時間短縮営業の命令が違法・違憲だとし、特措法そのものの違憲性についても争う考え。一方で、今回の訴訟は「損失補填が目的でない」とし、損害賠償請求額はわずか104円と少額だ。 命令が出る前の「要請」段階では、時短営業に応じられなかった理由や、今回訴訟を提起した背景・意義について、グローバルダイニングの長谷川耕造社長とその代理人である倉持麟太郎弁護士に聞いた(※以下敬称略)。 飲食店だけ20時閉店は理解できない  ――2度目の緊急事態宣言下において、時間短縮営業の要請を受け入れなかった理由を教えてください。 長谷川:コロナに関するいろいろな科学的分析がされるなか、(行政の感染症対策に対し)大きな疑問があった。国内の死者数をみてもこれまでで約9000人と、過去のインフルエンザと比べても少ない。  こうした中、(飲食店に対し1度目の緊急事態宣言のときと)同じような施策を打つことには納得ができない。ほかの施設が営業している中、飲食店だけが20時閉店というのは理解しがたい。(行政は)恐怖心をあおるようなことばかりで、むしろ政策によって生きるか死ぬかという塗炭の苦しみを味わっている人がたくさんいるのではないか。法律上も「要請」は行政指導であり、従う義務はないと考えている。 請求額は1店舗1円×26店舗×4日間  ――実際に受けた損害などの金銭的な理由が訴訟に踏み切った理由ではないのでしょうか。 長谷川:本質的にはそこではない。だからこそ、請求額は1店舗1円×26店舗×4日間(命令が出てから緊急事態宣言が終わるまでの日数)で104円。本音を言えば、損失を戻してほしいという気持ちもゼロではないが、僕らが言っても共感を得られないと思った。  ――時短要請に応じたほかの大手チェーンからは、「社会的責任として行政からの時短要請を受け入れた飲食店が苦境に陥り、要請に応じなかった貴社の売り上げが増加したことに疑問を感じる」などの批判もあります。 長谷川:時短するしないは各社の判断だ。このコロナ禍を生き残るために必死で営業してきた結果、売り上げ増となり、私たちも驚いている。行政からの要請を無条件で正しいと認識することが、民主主義だとは思わない。私たちは行政に任せたままでは会社を存続できないと考え、通常営業を行う判断をした。自身で考え意見を発することが、国をよくしていくことだと考えている。  ――今回の訴訟では、クラウドファンディングで訴訟費用などを募る、ウェブ上のプラットフォーム「CALL4」という公共訴訟を利用されています。 倉持:コロナ禍の政策や法律の中身により、自由がやんわりと真綿でしめつけられるような空気感であふれている。今回の裁判において原告はグローバルダイニングだが、コロナによるしわ寄せを受けた人や、声をあげられないで店を閉めた人など、違和感・閉塞感を持っている人は全員当事者だ。事実、本訴訟のクラウドファンディングでは、1000万円という目標額を1日で突破し、CALL4史上過去最大の寄付額が集まった。  ――法令の違憲を争う以上、最高裁にまでもつれこみ決着まで数年近くかかる可能性もあります。その場合、既にコロナの脅威がなくなっているようにも思いますが、それでも訴える意義があるとお考えですか。 倉持:1~2年でコロナが収束したとしても、コロナを機に露呈した張りぼての民主主義、張りぼての法の支配への疑問はのこる。それを一番厳格に判断してくれるであろう司法の場で提起するのは意味があることだと思っている。 長谷川:表現の自由とか法の下の平等はコロナが収束しても大切だし、日本は民主主義の国だと信じたい。

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