2020年10月31日土曜日

<社説>核禁止条約1月発効 日本は参加へ転換せよ  琉球新聞社説 10月28日

核兵器を史上初めて全面的に非合法化する核兵器禁止条約が来年1月に発効することが決まった。米国による広島、長崎への原爆投下から75年。核軍縮に向けた大きな一歩となった。  一方、日本は唯一の被爆国でありながら、安全保障上の脅威への対処を米国の「核の傘」に依存しているため条約参加を拒んでいる。被爆国として矛盾した対応であり被爆者に対する背信行為だ。  条約採択をけん引し2017年のノーベル平和賞を受賞した非政府組織(NGO)核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、日本の条約参加こそが核廃絶実現へ大きな影響を与えるとして、言葉だけではなく行動を求めている。日本が核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任するなら、禁止条約参加に方針転換すべきだ。  最低でも条約発効後の締約国会議にオブザーバー参加して核廃絶を求める各国と議論を深める必要がある。  ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によると、今年1月時点の世界の核弾頭数は計1万3400発。米国とロシアの2カ国だけで1万2千発を超え、全体の約9割を占める。  米国は中距離核戦力(INF)廃棄条約から離脱し、米ロ間に唯一残された新戦略兵器削減条約(新START)は来年2月に期限を迎える。  現在、米中ロを中心とする「新冷戦」下にあり、中国は中距離核戦力を保有し、トランプ政権は小型核の開発・配備を進めている。北朝鮮の核問題も解決していない。地球最後の日までの残り時間を概念的に示す「終末時計」の最新時刻は、今年1月「100秒」となり1947年の創設以来、過去最短である。  核禁止条約は、米ロ英仏中5カ国の核保有を認める代わりに核軍縮義務を課した核拡散防止条約(NPT)が成果を上げないため、その対抗としてできた。  前文で「ヒバクシャの受け入れ難い苦しみに留意する」と明記し、核兵器の非人道性を指摘している。核兵器の開発や実験、保有、使用などを禁止。使用の威嚇も禁じることで核抑止力を否定した。  禁止条約は、批准した国だけが法的に拘束され核兵器保有国や未加盟の国への強制力はない。それでも「核は違法」という国際的認識を浸透させることで核保有国に核の使用を困難にさせる政治的効果が期待できる。  ところが日本政府は「わが国のアプローチとは異なる。署名しない考えに変わりはない」(加藤勝信官房長官)と背を向ける。菅義偉首相は9月の国連総会一般討論のビデオ演説で、条約に一切触れなかった。  沖縄県議会を含む全国で4分の1を超える地方議会が条約の署名・批准を求める意見書を採択した。政府は「核なき世界」を求める被爆者と国民の思いに応える責務がある。

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