2020年9月8日火曜日
【総裁選】「党の体質改善」「デジタル庁新設」「中間層への支援強化」3氏の政策比較
自民党総裁選に立候補した石破茂元幹事長と菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏は8日、党本部で所見発表演説会や共同記者会見に臨んだ。菅氏は安倍晋三首相の路線継承を基本に据える一方、岸田氏は経済政策で中間層への手厚い配慮を求め、石破氏は憲法改正で首相が主導した党の「改憲4項目」の見直しを訴えるなど、政策面の違いが際立った。
■石破氏、党の体質改善を主張
石破氏は首相と対峙してきた立場も踏まえ、他の2氏とは一線を画し「自民党がいかにあるべきか」を論点に挙げた。平成22年改定の党綱領に基づき「国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる党であるべきだ」と述べ、体質改善に取り組む考えを強調した。
経済政策では、東京一極集中の是正を最大の課題に掲げ、「潜在力のある地方の力を最大限生かさないと国内総生産(GDP)は維持できない。政治、経済、金融の中心である東京の負荷をこれ以上、増やしてはいけない」と訴えた。
その上で、地域分散型社会への転換など構造改革に取り組み、低所得者の雇用確保と所得増を進める考えも示した。
憲法改正に関しては、自民党が野党時代の平成24年に策定した改憲草案に戻るよう求め、党の「改憲4項目」路線を修正する考えをにじませた。憲法に政党の役割を明記することや、参院選「合区」の解消を優先的に議論することも主張。「自衛隊は国の最強の組織。司法、立法、行政による厳格な統制は必要」とも述べた。
新型コロナウイルス対策については、「私は『医療現場は逼迫していない』という認識に立たない」と述べたうえで、医療現場を支援する必要性を強調。「経済的支援の拡大と強制力を伴った措置の導入は検討されるべきだ」とも語り、感染収束を待たず、新型インフルエンザ等対策特措法を改正すべきだと訴えた。
野党が安倍政権を追及する上で重視してきた「森友・加計学園」や首相主催の「桜を見る会」の問題にも言及した。「世論調査では納得した人が非常に少ない。納得した人が増えなければ責任を果たしたことにはならない」と述べ、再調査を検討する考えを示した。(奥原慎平)
果たしたことにはならない」と述べ、再調査を検討する考えを示した。(奥原慎平)
■菅氏「デジタル庁を新設」
「行政の縦割りを打破し、既得権益を取り払い、あしき前例主義を排し、規制改革を全力で進める」
菅氏の所見発表演説は、安倍政権で取り組んだ実績をちりばめつつ、新型コロナウイルスなど喫緊の課題への対応を強く打ち出す内容だった。
最優先課題とする新型コロナ対策では「欧米諸国のような爆発的な感染拡大は阻止し、国民の命と健康を守る」と強調した。検査体制や医療体制を拡充し、来年前半までに全国民のワクチン確保を目指すと明言した。自身が旗振り役を務める観光支援事業「Go To キャンペーン」などを推進し、経済社会活動との両立を図るとした。
経済では首相の経済政策「アベノミクス」の継承と、さらなる改革の推進を宣言した。コロナ禍でサプライチェーン(供給網)の問題が顕在化した問題を踏まえ、「デジタル化など新たな目標について集中的な改革と必要な投資を行い、再び力強く経済成長を実現したい」と語った。
感染拡大下の教訓を踏まえ、複数の省庁にまたがる政策を強力に進める体制を構築するため「デジタル庁」の新設も表明。地方活性化のため、最低賃金の全国的な引き上げや、感染収束後を見据え、外国人観光客(インバウンド)をさらに増やす考えも示した。
外交・安全保障では「機能する日米同盟を基軸とした政策を展開し、国益を守り抜く。中国をはじめとする近隣国と安定的な関係を構築する」と明言。北朝鮮による日本人拉致事件の解決に強い意欲を示した。
憲法改正については、党の「改憲4項目」を軸に議論を進める考えを表明し、各党が国会の憲法審査会で「与野党の枠を超えて建設的な議論を行っていく」よう求めた。不妊治療の保険適用にも意欲を示した。(大島悠亮)
■岸田氏、中間層への支援強化
岸田氏が特にこだわったのは経済政策だ。「アベノミクスによって間違いなく大きな経済の成果が得られた」と首相を評価しつつ、「成長の果実の分配を考えなければならない」と述べ、最低賃金の引き上げや教育・住宅費負担の軽減による中間層への支援強化を打ち出した。
新型コロナウイルス対策については「感染症対策と経済対策」を同時に検討する必要性を強調した。インフルエンザとの同時流行が懸念される秋冬に向け、「医療機関の経営を安定させ、ワクチンや治療薬の一刻も早い開発につなげなければならない」とも訴えた。
外交・安全保障に関しては、4年7カ月の外相経験を踏まえ、欧米や豪州、インドなどを念頭に「基本的な価値を共有する国々とともに、環境やエネルギー問題などにしっかり取り組む」と指摘した。
地上配備型迎撃システム「イージス・アショア(地上イージス)」の配備断念を受けた敵基地攻撃能力をめぐっては、「議論を行うこと自体は意味がある」としながらも「法律的にも技術的にも詰めなければならないことがたくさんある」と語った。
憲法改正については、9条への自衛隊明記など自民党の改憲4項目に関して「議論を進める材料として訴えていかなければならない」と明言した。「国民にしっかり考えてもらう機会を増やすことが王道だ」とも述べ、首相が果たせなかった改憲を引き継ぐ姿勢を示した。
岸田氏と首相は当選同期で、一時は「意中の後継候補」と目されていた。「7年8カ月にわたって国家国民のため孤独やプレッシャーに耐え、身を粉にして努力されたことに敬意を表したい。首相の成果を土台に次の時代を考えなければならない」と言及することも忘れなかった。(永原慎吾)
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