2020年7月26日日曜日
北岡伸一 国際協力機構(JICA)理事長(同機構提供)© 時事通信 提供 北岡伸一 国際協力機構(JICA)理事長(同機構提供)
新型コロナウイルスの感染拡大は、世界的な原材料や部品の供給網(サプライチェーン)を大きく揺るがした。過度な中国依存からの脱却を図る米国主導の動きが加速し、中国は国内の体制への不満をそらせようと地域の緊張を高める。米国と同盟を組み、中国とも経済的結び付きが深い日本は、米中の覇権争いで激変する安全保障環境をどう生き抜くべきか。有識者に聞く。
◇反撃能力保有の検討を=北岡伸一・東大名誉教授
―新型コロナウイルスの国際社会への影響は。
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新型コロナは感染力は強いが重症化率は低い。ただ、各国が都市封鎖など経済活動の制限を行った結果、経済的な打撃は世界大恐慌に匹敵する。また、中国はコロナを機に積極的に途上国に対して援助攻勢に出ている。この二つがオーバーラップして、国際社会の変化を加速させている。第1次・第2次世界大戦、世界大恐慌後の国際社会には非常に大きな変化が起きた。今回も起きるかもしれない。
―ポストコロナは民主主義と独裁主義の争いになるのか。
今秋にトランプ米大統領が再選されるかどうかにもよる。外交に永遠の同盟国はないと考えるべきであり、日本はもう少し自主性を持ちながら、国際協力や民主主義という方向に世界をリードするべきだ。
―部品供給網(サプライチェーン)の問題もあらわになった。
中国に部品供給を全面的に依存するのがまずいことは、誰もが気付いたはずだ。対応策はサプライチェーンの多様化と備蓄だ。
―米国との関係では、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画が停止された。
陸上イージスは導入価格が高いが、効果は乏しく、あまり頼りになるものではない。
―陸上イージスは「専守防衛」の日本向きではないか。
安全保障戦略の基本は、国際情勢と彼我の技術・実力の差から考えることだ。彼我の実力が同じ、あるいは相手が強いときには、専守防衛では守り切れない。米国が必ず守ってくれるのであれば専守防衛も可能だが、日本は米国の一州ではない。主として防衛だが、場合によっては反撃する能力も持たなければ、国の安全は成り立たない。
―自民党は敵基地攻撃能力の是非について検討を始めた。
敵基地への先制攻撃には反対だ。私の主張は反撃能力の保有だ。相手からの一発目は甘受せざるを得ない。その代わりに攻撃を受けた後は反撃する覚悟が必要だ。それが抑止力になる。
―日本は懲罰的抑止の考え方は取れないのでは。
金科玉条にするような話ではない。安全保障を考えるときは概念ではなく、現実に向き合うべきだ。1960年代、70年代の、日本が「盾」で専守防衛に徹し、米国が「矛」で攻撃を担うという議論は米国が日本を警戒していたからこそ成り立っていた。時代は変わっている。
北岡 伸一氏(きたおか・しんいち)東大院修了。法学博士。東大教授、国連代表部次席大使を経て15年国際協力機構(JICA)理事長。72歳。奈良県出身。
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