2019年12月14日土曜日


 【フランクフルト時事】米フェイスブック(FB)主導の暗号資産(仮想通貨)「リブラ」計画に刺激され、中央銀行によるデジタル通貨導入の議論が活発化する中、欧州単一通貨ユーロを管理する欧州中央銀行(ECB)も、欧州連合(EU)の後押しを受け中銀デジタル通貨の発行に向けた内部検討に着手した。先行する中国を追い、デジタル通貨をめぐる覇権争いが加速する可能性がある。
 「既に作業部会を立ち上げており、取り組みを加速させるつもりだ」。ラガルドECB総裁は12日の会見で、デジタル通貨への積極姿勢を強調。関連した調査や実証実験などを2020年半ばまでに行い、実際にコスト削減などにつながるかどうかを明らかにする意向を示した。
 ECBは日銀と共同でビットコインなど仮想通貨の基盤技術である「ブロックチェーン(分散型台帳技術)」を使った銀行間決済への応用を探る研究を2016年から実施しており、新技術には意欲的。ラガルド総裁は2日、欧州議会で「欧州市民向けの中銀デジタル通貨の価値評価で、ECBとしても務めを果たす」と発言、個人の日常決済での利用も念頭にあることを示唆した。
 各通貨当局の姿勢には濃淡もあり、米連邦準備制度理事会(FRB)は冷ややかで、日銀も慎重。基軸通貨の米ドルに対抗意識を燃やす中国は最右翼に位置し、人民銀行が発行準備を着々と進めているとされる。
 欧州でも非現金決済の分野では、クレジットカード大手のビザやマスターカードなど米国企業が圧倒的に優勢。ビルロワドガロー仏中銀総裁は、デジタル決済の基盤技術の多くが欧州外の企業に握られている点について「主権に対する脅威になり得る」と懸念を示し、「eユーロ」の早期導入を主張。一方、ドイツ銀行協会も「デジタルユーロ」の開発で提言をまとめるなど、業界からも待望の声が上がっている。

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