2020年7月20日月曜日

コロナ不況 3っの蒸発  蒸発して消えてしまった?!

© 東洋経済オンライン 世界中を襲ったコロナ・ショックによる「3つの蒸発」の正体とは?(写真:peterhowell/iStock) わずか半年ほどで世界を震撼させ、経済活動や社会活動をいっきに停滞させ、世界中の人々の生活をどん底に陥れようとしている「コロナ・ショック」。 しかし、「コロナ・ショック」は日本にとって、必ずしもマイナスばかりではない。むしろ、経済的な側面よりも、日本人の価値観や働き方を大きく変え、日本という国が真に豊かで、幸せな国になるための好機と捉えている──。 『現場力を鍛える』『見える化』など数多くの著作があり、経営コンサルタントとして100社を超える経営に関与してきた遠藤功氏は、「この『コロナ・ショック』は、ビジネス社会における『プロの時代』の幕開けになる」という。 「コロナ・ショック」を見据え6月に集中執筆した『コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方』を緊急出版した遠藤氏が、「コロナ禍、世界中を襲った『3つの蒸発』の正体」について解説する。 いままでの認識をはるかに超えた「コロナ・ショック」  2008年のリーマンショックを超え、ウォール街の暴落に端を発した1930年代の大恐慌に匹敵すると言われている「コロナ・ショック」。  今回の「出口」はそう簡単には見つかりそうもない。たとえワクチンなどが開発され、コロナというウイルスは収束しても、それで終わりではない。大きく痛んだ経済の回復には相当の時間を要する。  リーマンショック後は、中国やインドなどの新興国経済が比較的堅調で、世界経済を下支えした。しかし、今回はポストコロナの「機関車」(牽引役)は見えない。冷静かつ客観的に世界のいまの情勢を見渡せば、楽観的なシナリオは描けず、「世界同時不況を免れることは難しい」と言わざるをえない状況だ。  いまから思えば、私たちは「パンデミック」(感染爆発)というものを甘く見ていたとしか言いようがない。  2009~2010年に流行した新型インフルエンザのときも「パンデミック宣言」が出されたが、実際の被害は想定よりも軽微だった。「新型コロナウイルス」も当初は同程度だろうと高をくくっていた。  しかし、「実際のインパクト」は、私たちの想像をはるかに超えて広がり、長引き、世界中を混迷に追い込んでいる。「まさかこんなことに……」という事態が起きる時代に生きているのだということを、私たちは再認識させられている。  コロナは何の前触れもなく、経済活動のほぼすべてを一気に「蒸発」させてしまった。わずか半年ほどで世界を震撼させ、世界中の人々の生活をどん底に陥れようとしている。  では、「コロナ・ショック」は経済活動をどのように「蒸発」させてしまったのか。ここでは「コロナ・ショック」の元凶といえる「3つの蒸発」の正体について解説する。   経済活動のほぼすべてを一気に「蒸発」させてしまった発端が「移動蒸発」である。 瞬く間に世界中が「引きこもり」状態に陥った 【1】「移動蒸発」であらゆるものが止まった 国をまたいだ移動は言うに及ばず、国内でも県をまたぐ移動は、ほぼ全面的にストップした。世界は瞬く間に「引きこもり」状態となり、移動がもたらす経済のダイナミズムは消失してしまった。  国土交通省の航空輸送統計によると、3月の国際線利用者数は対前年同月比77.3%減の約47万人、国内線利用者数は同53.6%減の約434万人だった。4月以降はさらに深刻で、4月の訪日客数はわずか2900人。対前年同月比99.9%減。ほぼゼロになってしまった。  米国のレンタカー大手・ハーツ・グローバル・ホールディングスは、5月に経営破綻した。外出・移動規制によって、キャンセルが急増したためだ。  あらゆる移動が世界中で消失してしまった「移動蒸発」。ここから、経済活動の「負の連鎖」が始まった。 【2】「需要蒸発」で店舗を閉める企業が続出  「移動蒸発」が「需要蒸発」を引き起こす。  旺盛なインバウンド(訪日観光客)需要に支えられてきた百貨店の売上高は、いっきに減少。百貨店の3月の売上高は、対前年同月比33%減、4月は72%減となった。  外食産業では、ワタミが全店舗の13%にあたる65店の閉店を決め、減損損失19億円を計上した。ファミリーレストランのジョイフルは、全国に展開する713店の約3割にあたる約200店を7月から順次閉店すると発表した。  グローバルに展開する企業へのインパクトはさらに大きくなり、「ZARA」などを展開するアパレル世界最大手インディテックス(スペイン)は、全体の16%にあたる最大1200店舗を閉める計画を明らかにした。「ファストファッションの勝ち組」と呼ばれた同社でさえ、2020年2~4月期の純損益は赤字に転落し、大量閉店に追い込まれた。  「移動蒸発→需要蒸発」という「負の連鎖」は、新たな「蒸発」へとつながっていく。  「需要蒸発」は「雇用蒸発」につながる。「コロナ・ショック」で、世界中の失業率増加が加速している。 【3】「雇用蒸発」で失業率増加が加速  アメリカでは、すでに5人に1人が職を失った。5月の失業率は20%に達し、1930年代の大恐慌並み(約25%)になる可能性もあると指摘されている。トランプ大統領が経済活動の再開に前のめりになる理由はここにある。  欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会によると、域内の観光業に従事する2700万人のうち、600万人が失業しかねないという。こちらも5人に1人が職を失う可能性がある。  NHKの報道によれば、中国では2億人がコロナの影響で仕事を失ったという。厚生労働省によると、日本でも、7月1日時点でコロナの影響による失職者が3万人を超えた。約1カ月で1万人ほど増えており、雇用状況の悪化に歯止めがかかっていない。  さらに、5月29日に公表された4月の雇用統計によると、4月の休業者数は過去最多の597万人にのぼる。野村総合研究所の試算によれば、コロナが長期化し、行動制限が1年間続くとしたら、日本の新規失業者は222万人に達する。  「移動蒸発→需要蒸発→雇用蒸発」という「蒸発のドミノ倒し」。私たちは「出口の見えないトンネル」に入り込んでしまった。 いまこそ「覚醒」しなければならない  しかし、「コロナ・ショック」は日本という国にとっては、決してマイナスばかりではない。「緩慢なる衰退」に陥っていた平成の30年から脱却し、思い切って変革を進めるラストチャンスと捉えるべきだ。  ビジネスにおいても、生活においても、「止まる」ということはとても大切なことだ。工場も点検、補修をしようと思えば、設備を止めざるをえない。止めるからこそ、動いているときには見えないいろいろなものが見えてくる。  コロナによって、私たちは「完全に立ち止まらざるをえない状況」に追い込まれた。しかし、立ち止まったからこそ見えてきたことも多い。そこにこそ、日本という国、日本企業、そして日本人の「再生、復活するヒント」が隠されている。

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